紅葉の旅 Day 1 忠別避難小屋まで

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山岳徘徊倶楽部も、とうとう初老と呼ばれても仕方のない年齢を迎えている。そんなこともあって、最近、夫婦の会話は、ネガティブ発言ばかり…。そんな僕たちが、何を血迷ったのか、2泊3日の縦走の山旅を決行した。紅葉の旅、第2弾は、果たして?




北海道の山は、9月の中旬といえば、紅葉の真っ盛りだ。先週、赤岳の日帰り登山で紅葉の旅を楽しんだ。長い冬が始まる直前の山は、燃えるような色に包まれる。
長らく閉鎖されていたクチャンベツの林道が開通した。僕らは、何度も、ここを利用していたが、長く辛い印象が濃く、いつしか候補から外れていた。実際、最近の山はお手軽になり、縦走と云えば、本州へ遠征し、食事付き山小屋利用で歩くスタイルが続いていた。
何故か、五色ヶ原を歩いてみたい、とママが言う。ハッキリ言って、自信が無い。重荷を背負うと3〜4時間が限度だな、と勝手に解釈していた。実際、今季、高原温泉から緑岳経由で白雲の避難小屋まででギリだった。
しかし、五色ヶ原を歩くルートは魅力的なものだ。その誘惑が勝った…。
 
山では何が起こるか分からないという覚悟で登る。以前からそう思っていたけど、今回は、もっとシビアだった。ひょっとしたら、目的地に辿り着けないかも知れない、というのも、より現実的に思えた。大沼の指定野営場で1泊するスケジュールも検討したが、このところの雨続きで、野営場は水没している可能性もある。大雪山は、基本的に、指定以外の場所で野営は出来ない。大沼を過ぎると、忠別かヒサゴ沼の避難小屋まで歩き続けるしかないが、僕らの足では、更に5時間超の時間を要する。時間的には問題ないが、要は、体力だ。計画の段階で、気力さえも充分ではないのに、最近衰えた体力が、一番の不安材料だった。
 
敗退覚悟、ビバーク覚悟の初日、クチャンベツの登山口を出発する…。
 
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唯一の渡渉地点
 
 
昔は、沢沿いの道を、何度か渡渉を繰り返して続く道だったが、増水する度に橋が流されるので、山腹を巻く道になった。それでも、渡渉が一回ある。やはり、水量は多く、慎重に渉る。
沼ノ原に到達する前に、一度だけ辛い急登がある。ここは頑張らずに、一歩一歩、息を整えながら登る。休憩も、場所では無く時間で摂るようにする。いつになく、慎重だった。
 
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急登です
 
 
2時間で沼ノ原の入口に着く。タイムスケジュール通りだ。勿論、僕たちの足に合わせたスケジュールだから、これを参考にしないでね。
あいにく、天候は曇りで、遠望が効かない。待望のトムラウシの姿に感激するのがベストなんだけど、今日は、スッポリと雲の中…。
 
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草紅葉の沼ノ原
 
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時折、青空も覗くが、山々は姿を見せない
 
 
やはり、大沼の野営場は、ほぼ水没していた。残る砂地に、無理にテントを張ったとしても、僅かな雨で浸水しそうだ。
沼ノ原の木道は長く続く。歩きやすいが、これが、意外に足裏に堪える。大地のクッションが如何に優しいか分かる瞬間だ。夏には様々な湿原植物が咲く高層湿原は、すっかりと草紅葉が拡がり、寂しささえ漂わせている。やがて、木道は終わり、道は、灌木帯に入ってゆく。それは、まさに、秋色の中に入ってゆくということだ…。
 
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道は一旦下る
 
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次の急登が、山肌に見える
 
 
五色の水場まで、一旦、標高を下げる。その途中から見える急斜面に、登山路が見えてくる。下部は泥んこで有名な悪路だ。あれを登り切れば、五色ヶ原への入口に向かい、長いだけで緩斜面が続き、五色岳へといたる。夏だと、花々に癒され、百花繚乱の五色ヶ原だけど、今回は、我慢の道になるかも知れない…。
 
五色の水場で休憩し、泥んこ道に挑む。しかし、長い年月で踏み固められた所為か、以前よりは歩きやすくなっていた。これも、雨の直後だったら、滑りやすい道になるだろう。何とか通過し、沼ノ原を見下ろす位置に来ると、普通の登山路になる。
 
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沼ノ原を見下ろす
 
  
ここからは、しばらく、風光明媚な沢沿いの道を歩く。今では木道が敷かれ、その風情も演出される。ま、木道が敷かれるのは、風情のためではなく、道が荒れないようにするためだけど…。
 
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秋色が深まる
 
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沢沿いに、道は辿る
 
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庭園の様だ
 
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束の間の青空
 
 
さながら日本庭園の様な散策路が過ぎると、這松帯に入ったり出たりを繰り返す。木道の切れたところは泥んこの悪路になっている。ママはスパッツをしているが、僕は、スパッツを付けない派(←そんなのあるか?)なので、ズボンの裾は泥だらけ…。乾いたら汚れは落ちるんだと、気にもしない。但し、靴下は濡らせないので、これでも気を遣って歩いているのだ。
 
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這松帯の中
 
   
この辺りで、一瞬、五色岳が霧の中から見えた。何となく距離感が掴めて安心する。以前の記憶も、ほぼ正確だった。もう、頑張らなくても、充分に間に合うことが分かった。五色ヶ原の核心部では、夏の日の記憶を蘇らせ、一面に咲く花々を思い起こした。花の時季に訪れたいと思うが、暑い分だけ、今日よりも過酷になることが分かっている。
 
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五色岳を捉える
 
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もう間近に迫る
 
 
五色岳には、7時間弱で到達した。計画通り歩けたが、これは一般的には、スローペースという。ヒサゴ沼まで行ける時間と体力は残っていた。自分でも驚きだった。しかし、混雑が予想されるヒサゴ沼を避けて、予定通り、忠別の避難小屋を目指した。曾て、ここからの下りは、這松トンネルと呼ばれ、薄暗く陰気な道で有名だったが、名物の這松の枝は切り払われ、快適な道に変容していた。ちょっと、拍子抜け…。
 
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這松のトンネルになっていない
 
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クロマメノキの紅葉
   
  
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ガスが濃くなり、辺りは真っ白になる。紅葉の旅の初日、その全容はベールに包まれ、明日以降の天気次第になる。小屋の脇の雪渓の場所に着いても、小屋が見えないくらい、霧は深い。忽然と現れた小屋を見て、僕たちの初日は終わる。一番乗りで、まだ、誰もいない。旅は始まったばかりだけど、僕たちは安堵感と充実感に包まれていた。「ここまで来られた」という、曾ては思いもしなかった至極当然だったことが、今では、特別なことになっている事に気付くのだった。
 
結局、10人ほどの旅人が訪れ、夜の静寂を迎える。
 
  
さて、次回は、こんな風景から始まります…。
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by meo_7 | 2014-09-16 14:52 | 登山(山岳徘徊倶楽部) | Comments(0)


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