大雪山 2泊3日 Day1
先週のニセイカウシュッペ山で、体力回復プログラムの第4弾を終わり、今回は、体力増強プログラムとして、2泊3日の装備を担いで歩くことにした。
天気は最高、と言っていい。雲ひとつない青空の下、スタート地点の道には木洩れ日の織りなす模様が揺れていた。時刻は、午前7時半を少し回っていた。僕は宿泊だから、遅い出発でも構わないのだが、日帰りの人の大半は、とっくに出掛けている。 秋には燃えるような色に彩られる ニセイカウシュッペ山 小さなジグを切って、高度を上げる。既に標高は高いので、展望も楽しみながら登ることが出来るのも、人気の的なのだろう。今日は金曜日、ウイークディーでもあり、それほど人は多くない。僕もひとり旅なので、のんびりと、自分のペースで歩く。 ツマトリソウ ホソバイワベンケイ 阿寒方面 今日は空気が澄んでいて、遠望が効くようだ。遠くの山並みが浮かんでいる。山座同定は出来ないが、勝手に思い込んで眺めている。近くを通り過ぎた人の会話の中に、知床も見えたね、というのが聞こえてきたから、本当に遠くまで見えるのだろう。 雪渓のトラバース 今年の大雪山は、6月の低温続きで雪解けも花の開花も遅れている。それでも、登山道の雪渓は、少ないと感じる。冬の積雪量が多くなかったということなのかも知れない。ちょっと緊張を感じる場面もあるが、この時季のいつもの道だ。 長いトラバースを終えて、いつもの休憩地点で重たいザックを下ろす。心地良い風が、濡れた身体を適度に冷やしてくれる。木陰にはミツバオウレンが可憐に咲いている。涼しげな場所を選ぶ花は、やはり、暑さが苦手なのだろうか…。 ミツバオウレン 雪解け水の流れる小沢の水音を聞きながら、再び灌木帯の道を辿ると、第二雪渓のお花畑に出る。雪解けが進んだところから順次開花が始まり、お花畑を拡げてゆく。こんな場所では、静寂の冬と、芽吹きの春と、盛夏の輝きを同時に見られる。 チングルマ、エゾツガザクラの群落 ニペソツ山 雪渓を登り切ると、再び、緩やかな灌木帯の道で、間もなく、奥ノ平に出る。僅かな距離で、変化を楽しめるルートだ。淡々と登り続けるだけの山も多いけど、このルートは、所謂イベントの多いルートだ。飽きさせないんだよね。 奥ノ平 ジンヨウキスミレ
奥ノ平も雪渓に埋もれ、花咲く斜面も、まだ蕾さえ出していない。ここは、いつも、花期が遅く、咲き残りを探すには絶好の場所なのだ。奥ノ平のトラバースを終え、ひと登りすると、コマクサ平に到達する。ここまで登りに来る人も多い。標高は既に1,860mなので、充分に高山の雰囲気を楽しめる。黒岳、桂月岳など表大雪の山並みの一部も見えるし、何たって、高山植物の女王コマクサが見放題だ。けれど、僕は、この場所でコマクサの本気撮影をすることは、殆どない。何か、コマクサって、お手軽に会いたくないと思ってるだけだけど…。ここは、勿論、コマクサだけではない。キバナシオガマ、タカネオミナエシなど、色々な高山植物に出会える楽園には違いない。 イソツツジ 神の田圃 クロマメノキ コマクサ平
コマクサ平は、その名の通り、ほぼ平坦な道が続く。そこを抜け、ナナカマドの道を、少しだけ下りながら辿ると、第三雪渓が近付いてくる。コマクサ平からも見えるが、あれを登るんだ、と思うと、ちょっとだけナーバスになったりする。実際、僕の場合、この第三雪渓の登りで、激しく消耗するのだ。 第三雪渓 コケモモ 第三雪渓の斜面 予想通り、第三雪渓の登りはきつく、長く感じる。これはもう、一種のトラウマになっている。精神的にへこたれるのだ。しかし、実際には、日帰りの装備で登ると、意外にもアッサリと登れたりする。息切れしたり、足が動かなくなったら、振り返ると良い。そこには、頑張って登った証としての、雄大な風景が拡がっている。 振り返り見るコマクサ平 エゾコザクラ キバナシャクナゲ 登り切ると、雪解け水の流れる平坦な道を歩くが、時季や時間によっては、水の量が違う。午前中は少ないが、午後にもなると、結構激しく流れていたりする。本当は飛び石伝いや、水の中を歩くのが正解なのだが、水を避けて、登山道脇の草地を歩く人も多いのか、結構な踏み跡になってしまっている。基本、登山靴は防水仕様になっているし、スパッツも着けていれば、靴の中が濡れることはない。僕の場合、ただ面倒だから、水の中をジャブジャブ歩くだけだけど…。 メアカンキンバイ ミネズオウ 花を愛でながら歩いて行くと、最後の頑張りどころの第四雪渓に出る。もう、天空への道だ。今日は励まし合う相手もいないソロ山行なので、自分で自分を励ますというわけだ。人格がふたつ顔を出すという、奇妙な体験が出来るのも、山のひとり旅の特徴だ。 第四雪渓
フウフウと、登り切ると、赤岳への一本道が続く。既に周りは、風衝地帯特有の花々が咲き乱れている。チョウノスケソウは、この辺りから現れるが、登山道から離れているところが多い所為か、みんな通り過ぎてゆく。目立つ黄色の花は、エゾタカネスミレの群生だ。名前に示されるように「高嶺」まで訪れなければ見られない。スミレマニアにとっては憧れのひとつでもあるが、出会うには、相応の頑張りを必要とする。 赤岳に続く道 エゾタカネスミレ 赤岳は、一応の名前を名乗っているが、写真で見ても分かるように、周囲の山々の圧倒的な景観には、悲しくも敵わない。山頂に到達したという達成感は満たされないかも知れない。しかし、この山岳風景は一級品だろうか。ここから、謂わば、フラワーロードが始まるのだが、今季は、まだ百花繚乱とはいかないようだ。チョウノスケソウは、殆ど蕾を出したばかり。ホソバウルップソウも咲き始めたものが多い。エゾオヤマノエンドウが最盛期だろうか。キバナシオガマも数が少ない。
赤岳を振り返る ホソバウルップソウ ミヤマキンバイ スカイラインを歩くハイカー 小泉岳へのなだらかな道を、徐々に高度を上げてゆく。これが地味に辛い。それは、足下の不安定な岩礫帯を歩くからだ。体幹の弱っていることが、よく分かることが哀しくなる…。以前は、こんな道、ヒョイヒョイだったなーと、過ぎ去った時間など取り戻せないのに…。今大事なことは、怪我なく歩き続けることが一番になった。 辿り来た道を振り返る たゆまなく歩き続ければ、いつか辿り着く。それは真理だ。やがて、目の前に、白雲岳の黒い塊が見えてくる。名前は白雲なのに、なぜか、黒い塊にしか見えない。それは、背景の山々の残雪模様の美しさの所為もあるのだ。白雲岳が見えてくると、一層、大雪山山系の雄大さを感じ取ることになる。遙かなる山トムラウシは、正面に鎮座し、十勝連峰への連なりもクッキリ。遠くは夕張山地に芦別山地。東大雪に位置する石狩連峰、ニペソツ山も手に取るようだ。 そして、道は、白雲岳分岐へと、緩やかに下る。今日の旅は、ほぼ終わったと言っていい。もう、頭の中は、テントの中で珈琲を飲みながら寛いでいる姿を想像しているのだった。 白雲岳 小泉岳山頂は丸い 遙かなるトムラウシ 白雲岳分岐 シーズン中は、いつも賑わう分岐。ザックをデポしてアタック中の人もいる。今回は、白雲岳をスルーして、そのまま、白雲避難小屋のテン場に向かう。途中、いつもならエゾコザクラの大群落に出会うはずだが、まだ雪渓が勝っている。実は、もう、そんなことはどうでも良くなっている。早く、テントでまったりとしたい、としか考えていないのだ。 ニペソツ方面 白雲避難小屋とテン場 エゾオヤマノエンドウ 避難小屋 テン場は空いている。テントの中からトムラウシが見える位置にテントを張り、贅沢な時間を過ごす。時間はたっぷりとあるので、少し散策をする。でも、集中力が切れているので、またテントに戻り、読書を開始する。夕方、人も僅かに増えてきた。少しばかり賑やかなテン場になり、夏山のざわめきも懐かしい。夕食を終える頃、人々はカメラを片手に、小屋周辺に集まる。まだ焼けぬ空を見上げながら、一日の終わりを待っているのだ。 さあ。明日は、どうしようか…。(Day2に続く) 夕張山地と芦別山地 夕照のトムラウシ
ママは都合がつかず、久し振りのソロ山行となった。元々はソロだったけど、すっかりとファミリー登山が中心となっていたので、丁度、心を鍛えるにもいい機会だ。
とか何とか言って、勝手気ままに過ごせる山行は、本分でもある。だから、心など、鍛えられるはずもないのだけどね…。
行き先は、通い慣れたと言ってもいい、銀泉台から白雲避難小屋までのルート。夏山シーズンでは、人気のルートだ。比較的楽に登れる事と、花が素晴らしい。
避難小屋のテン場に2泊し、気が向けば忠別岳のピストンでもしようか、という魂胆もある。けど、それはママには言っていない。次の日、気の変わることは、間々、あることだ。そんな時のために、本も2冊用意してある。
さて、体力は、果たして増強されるのか…。
天気は最高、と言っていい。雲ひとつない青空の下、スタート地点の道には木洩れ日の織りなす模様が揺れていた。時刻は、午前7時半を少し回っていた。僕は宿泊だから、遅い出発でも構わないのだが、日帰りの人の大半は、とっくに出掛けている。
よっこらしょっと、久し振りの重いザック。体力増強プログラムの一環だから、一眼デジは勿論のこと、交換レンズ3本を用意した。バルトロの70リットルは、パンパンに膨れあがった。軽量化全盛の時代、僕は、昔ながらの流儀から離れられない…。でも、内緒だけど、三脚は車のトランクに置いてきた…。
随分昔、銀泉台から観光道路が計画されていた。その名残の道を見ながら、赤岳への登山道に入ると、直ぐに雄大な風景に包まれる。秋には紅葉の名所といわれる大斜面が、右側に拡がる。
by meo_7
| 2015-07-14 15:06
| 登山(山岳徘徊倶楽部)
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