大雪山 Day3 ソロ山行の不思議

日程と好天続きという中、大混雑が予想された今回の山旅だったけど、意外に泊まり組は少なく、快適なテント生活だったように思う。今日は帰るだけなので、気は楽だが荷は重い。何か忙しく歩き回った感があり、明日の天気が良ければ、もう一日滞在してもいいな、と思ったぐらいだ。
 
山の朝は、みんな素早く、あっという間にテン場のテントが消えてゆく。時間に追われたくないから山に来ている僕は、マイペースを崩さない。今日は、遠望が効かず、晴れてはいるが、モヤッとした天気だ。どうせなら、陽が陰ってくれた方がいいのに、と思う僕の願いは、自己中心的だ。今日だけを楽しみに来ている人たちにとっては、失礼な願いだ。
 
帰途は、板垣新道から小泉岳の稜線を歩いていこう。小泉岳まで時間は2倍掛かるが、大雪山屈指の花の道だ。ここを通らずに帰るのは勿体ないと考えた。
 
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少し霞んでいます





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緑岳の分岐へ
 
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白雲避難小屋を振り返る
 
 
板垣新道とは、高原温泉から緑岳を経て避難小屋へゆくショートカットの道と理解していた。昔々は、正規のルートではなかったと記憶しているが、今では、当たり前のように使っている。実は、登山道らしきものを見た記憶がない。何故なら、いつも雪渓に覆われているからだ。ガスった日などは、目標物も見えないので、雪渓に記されたペンキかロープを頼りに歩くしかない。これも、昔々、避難小屋に管理人を置いていない時代には、そんな印さえもなかった。結構なサバイバルを経験した覚えがある。
 
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チシマクモマグサ
 
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エゾコザクラ

  
  
雪渓を渡ると、急登が待っているが、この急登の斜面にはお花畑が拡がる。お待ちかねのチョウノスケソウが、早速迎えてくれる。2日間、赤岳山頂直前以来、ずーっと見掛けなかったし、いったいどうなってるんだ?と思ったぐらいだ。
 
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チョウノスケソウ
 
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エゾタカネスミレ
 
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チョウノスケソウ
 
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エゾハハコヨモギ
 
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小泉岳稜線から白雲避難小屋
 
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ね、何もない山に見えるね…
 
 
見る分にはなだらかな女性的な稜線を持つ小泉岳だが、縦走装備での歩行は、地味に辛い…。一撃でやられるのではなく、じわじわと痛めつけられる感じだ。この稜線は、大雪山屈指のフラワーロードと呼ばれ、その品種の多さも誇っているが、遠目で見ると、のっぺらぼうで裸の山に見える。這松に覆われた道もなければ、灌木帯もない。しかし、その風衝地帯には、様々な花々がへばり付くように咲いている。何処でも歩けるのだが、道から外れる登山者を殆ど見掛けない。マナーが良くなったのだろう。こういうことを書くと、昔はどうだったの? という話になるが、昔は登山人口も少なく、まして、花に興味のある登山者は、ごく少数で、カメラを持ってウロウロする人など、ほんの僅かだった。だから、多少、道を外れようとも、それを真似する人もいなく、所謂、ダメージは深刻なものでは無かったのだろう。自然は、僅かのダメージだったら、回復可能な時代だった。いつか、登山ブームが訪れ、高山植物に興味を持つ人も多くなり、カメラの普及とともに、撮影者も増えてきた。デジカメの登場は、それを加速させた。当然、自然に対するダメージも大きくなる。そして、マナーの励行が叫ばれるようになる。それらの総てを批判するつもりはない。勝手にやればいいと思う。どうせ、その結果は、人間たちが負うことになる。大自然は、柔ではないよ。風や蝶や山を住処とする小動物たちが、必ず、種子を飛ばしたり持ち拡げて、必ず、新しい大地に生命を繋ぐものなんだ。コマクサだけを石で囲み慈しみ、雑草は踏みつぶすような人間たちに、自然を護れるはずもない。独善で思い上がりだ。護られているのは、人間の方だ。総てが命の連鎖だ。繋がっているんだ。人間だけが、山では異端者なんだ。
 
なーんてことを思いながら、苦しさを紛らわせる…。
 
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緑岳へ続く道とトムラウシ
 
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再び、花の稜線
 
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キバナシオガマ
 
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レブンサイコ
  
 
丁度、ジグを切る苦しい道で、思い掛けない人と会った。おしどり夫妻で有名な○田さんご夫妻だった。何年ぶりだろう。全く変わっていないので、なんて歳のとらない人たちだろうと思った。旦那さんのYOちゃんは、酔っぱらうと饒舌だが、素面だと無口だ。それも、変わらない。変わらないということは、懐かしさと比例するのだと思った。何より、元気そうで良かった…。
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おしどり夫妻がゆく…
 
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絵になりますね
 
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チョウノスケソウとエゾオヤマノエンドウの競演
 
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ホソバウルップソウ
 
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この山域では少ないアズマギク
 
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ミヤマタネツケバナ
 
 
おしどり夫妻と別れた後、なんだか、この山旅を終えたような気がした。確かに、今は帰り道なのだ。やがて、小泉岳の山頂標識を捉え、そこで休憩をする。日曜日だから、多くの日帰り登山者が歩いている。健脚者の中には、銀泉台から白雲岳に登り、避難小屋に寄り、緑岳を登り、小泉岳を経て戻る人もいる。いや、そういえば、昔はそのルートを歩いたな、と思い出し、僕にも、健脚者だった時代があったのだと懐かしむ。でも、過ぎ去ったことを懐かしむのは止めようと思う。その切っ掛けは、最近巷を賑わせている、所謂、安保闘争の再現をするかのような、若者たちの叫びだ。最近、やっとテレビでも報道されるようになったということは、隠し通せないほどの規模になったということの証かも知れない。彼らの叫びは、単純だった。
 
「民主主義は終わったという人がいる。終わったのなら、始めればいい…」
 
なんて、素敵な言葉だろう。
やはり、若者は、僕とは違い、「未来」を見ているのだ。そうだ、終わったからと肩を落とし、悲嘆にくれている場合ではない。始めればいいのだ。なんて、簡単明瞭な答えなんだろう。
 
ソロ山行は、不思議なものだ。総てをひとりで背負い、総ての責任を受け持つ。そのことが、どんな意味を持つのか分からないが、疲れ果てた身体で考えることは、きっとピュアなものなのかも知れない。何か、得体の知れないものに包まれて、閉塞感を抱きながら生きている現代の若者たち。立ち上がれ。下らない世の中を作った大人然とした偽善者たちを駆逐せよ。青空の下、山頂標識にて、僕も立ち上がった。全然意味は違うけど、とにかく立ち上がった。最後のショットを撮った。そして歩き始めた。何かが蠢き始めた気がして、少しだけ、足取りが軽くなっていた…。
 
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最後のショット(デモ行進ではありません)
 


by meo_7 | 2015-07-15 18:56 | 登山(山岳徘徊倶楽部) | Comments(4)
Commented by てばまる at 2015-07-17 11:41 x
3日間楽しませてもらいました~(^-^)/
あの時はイマイチ天気も悪くかったですが、あちこちに咲く花たちの群生にはただただびっくりでした。見たことのない花ばかりでしたし、もっとゆっくり歩いてみたいと思いました。
板垣新道の上部だったかな、エゾタカネスミレの新鮮なのを見たのは。
晴れてるとこれだけ雄大な眺めなんですね~ 

やっぱり本州の人間は北海道の山には憧れます。
また機会を作ってテントで訪れたいです。避難小屋はこりごり(^^;)
Commented by meo_7 at 2015-07-17 14:43
てばまるさん、こんにちは。
故郷を通過した台風は心配ですね。
北海道では3連休中に影響がありそうで、山行きは中止にしました。
トムラウシを計画していたのですけどね。
 
今度、北海道を訪れるときは、海の日狙いで来られるといいと思います。
珍しい花は、小泉岳、白雲岳、高根ヶ原で殆ど見られます。
 
テント泊は、お薦めです。
今回の僕のような計画が、写真撮影には最適です。
 
是非、計画してみて下さい。
Commented by なかよし at 2015-07-17 17:10 x
おいちゃんの山行記は長い だから時間がある時にゆっくり読みたくてついつい溜め込んでしまう 今日は時間があったのでゆっくり大雪山 Day1~3までじっくり読ませて貰いました。相変わらず文章も胸に響くし写真も目に訴えて来ますね 素晴らしい山行記でした。それと同時に月並みな言い方だけど元気も貰いました。こんな仕事柄連泊登山なんて夢の又夢、縦走なんて地図の上だけだけどおいちゃんを始めメンバーの投稿を読んでるといつかは果せる夢だと思って頑張れます。絵に描いたモチなんてイヤですからね(笑) 三脚無しの写真は手ブレも無くて普段の鍛錬の賜物ではないかと・・・鍛えなければ
Commented by meo_7 at 2015-07-17 18:41
なかよしさん、3日分もの長いレポートをお付き合いいただいて、ありがとうございます。
僕も、喫茶店をやってた頃は、なかなか時間が自由にならず、日帰り登山が主でしたが、一年に一回は、夏休み(盆休み)と称して、3連休位していました。

体力を維持しながら、是非、憧れの縦走を実現して下さいね。
早朝の雫を抱いた小さな花々が待っていますよ(笑)。
 
それと、ぶれた写真は掲載していないだけですから、ね。


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