クマガイソウ

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クマガイソウ
 
 
この花に、初めて逢いに訪れたのは、2007年6月10日だった。その日は蒸し暑く、急登に喘ぎながら、その地に辿り着いた…。そこには、思い描いた姿は無く、無残にも枯れ朽ちた残骸があった…。落胆したのは、勿論だったが、花に罪はない…。花は、僕の都合で咲くのではなく、花自身の都合で、時を過ごしているのだから…。
 
「また逢いに来るよ…」
 
と、語りかけて、その場を去った…。それから、10年の月日が流れる…。





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2007年6月10日
 
 
忘れていたわけではない。あまりに遠いことと、出逢うなら最高の時、と思い、僕は、「憧れ」が最高潮になる日を、待ち続けていたのかも知れない。そして、満を持して、というわけでもないが、突然、思い立ち、花探しの旅に出た…。5月20日のことだった。
 
遠い記憶を辿り、多少の不安を抱きながら、相変わらずの急登を喘ぐ。その不安とは、咲いているのか否かではなく、「果たして、あるのだろうか…」という思いだ。盗掘の対象にもなっている絶滅危惧種なのだ。
 
ママは、この日快調だった。僕は、いつも通り不調だった。特徴のある葉の様子を写真で見せて、先に登ってもらった。僕のモチベーションの支えとなるのは、「あったわよー」という叫びなのだ。でも、一向に、その声は聞こえない。スマホの呼び出し音が鳴る。しかし、電話の向こうの声は、「見つからない…」という声の繰り返しになった。記憶が正しいとしたら、もう見つけても良いはずなのに、と思いながら、僕は、登り続けた。途中に咲いていたサルメンエビネさえも気付かないほどに、僕の目は、クマガイソウしか捉えられない仕組みになっていた…。
 
そして、記憶の場所に、辿り着く…。
 
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2017年5月20日
 
 
将に、クマガイソウの蕾が…。いくつかの葉の中に、それは、スックと立ち、伸びていた。やっぱり、ママは見逃していた…。僕は、座り込み、ママに電話をする。程なく、苦笑いしながら、ママが下りてくる…。それは、蕾だったけど、「これから咲くんだぞ!」と言わんばかりの風格を、既に、放っていた…。
 
「どのくらいで開くんだろうね…」
 
知識を持ち合わせていない僕は、その答など見出せない。だから、
 
「また、来るぞ!」
 
と、宣言する。ママは、
 
「ここまで見たんだから、私も見たいな…」
 
そんな会話を繰り返し、この場所を後にした。勿論、山頂など目指さず、そのまま下りた。次の日、僕たちは、コアツモリソウとイチヨウランなどに出逢い、札幌に戻った…。
 
 
クマガイソウは、咲き始めが瑞々しいという。次第に色は濃くなり、そして朽ち果てる。僕は、札幌の我が家で、待ちきれない思いと闘う日々だった。頻繁に変わるはずもない天気予報を、1時間ごとに見つめている滑稽さ…。これにも訳はある。気温が上がったり好天が続くと開花は速まり、その逆もある。今回は、本気モードなのだ。僕が本気になるなんてことは、僕の長い人生で、滅多にある訳じゃない。いや、無いに等しい。こんな健気な姿を、神様は見捨てたりしないだろう。神様を信じているかどうかは、別にして…。
 
 
クドクド書いていますが、トップ写真を見て、皆さん気付いている訳だ。見事、出逢いは叶った、ということを…。
 
5月25日、ふたつの蕾が開花していた。色の濃い方が先に開花したのだろうか…。その姿に、熊谷草の名の由来を思い浮かべる。威風堂々という言葉も似合う。その風格の前に、僕は、ただ、座り込んで佇むだけだった。想像を遙かに超えていた。造形美、微妙な色合い、その総てに、意味があるという…。大自然を生き抜くための知恵の結集ともいえる。果たして、僕に、そんな知恵が備わっているかというと、訊くだけムダだ…。
 
 
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真正面の顔
 
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斜に構えて
 
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カップル
 
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色濃いから化粧したかな?
 
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ホント、不思議な…
 
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ネ、自然の織りなす不思議…
 
 
平日だからなのか、誰とも出会わない。どのくらいの時間を過ごしたのだろうか。今度、いつ逢えるのか分からない別れというのは、青春の香りを漂わせ、センチメンタルな風がそよぐようだ…。もう、そんな年齢でもないのだけれど、山の中だと、やっぱり、ほんの少し、心が洗われるのだろう…。照れくさくとも、それを受け容れて、僕は、その場を去る…。今回はピストンではなく、山頂を目指すのだった。何たって、機嫌が良くなってしまっているのだから…。
 
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ムラサキヤシオツツジ
 
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ツクバネソウ
 
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オオアマドコロ
 
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センボンヤリ
 
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シラネアオイ
 
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オオサクラソウ
 
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サルメンエビネ
 
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サルメンエビネ
  
 
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ノビネチドリ
 
 
今季、初めて、本格的な山歩きをした。それは、散歩という気軽さが無いという意味で。9分9厘、山行が終わるという頃、沢への降り口があった。ロープが備えられていているが、如何にも悪路だし、一筋縄ではいかない予感はしていた。中間辺りまで下りた所で、足がスリップした、泥んこの足場は、容赦なく、次の足がかりも無くしてしまっていた。何の抵抗も出来ないまま、ロープを持った手だけが、滑落を免れている支えだった。数メートル滑り落ちたズボンは、泥だらけ…。
 
その場所が、沢だったのが幸運といえば、そうなのか…。汚れた手を洗い、強か打った腰をさすり、右足の甲の違和感を確かめる。確実に、身体能力が衰えていることを気付かされた。これ、大切だね…。
 
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コンデジ撮影
 
 
Nikon Df
AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
 
Leica D-LUX5


by meo_7 | 2017-05-26 12:45 | 登山(山岳徘徊倶楽部) | Comments(2)
Commented by てばまる at 2017-06-06 22:04 x
クマガイソウというとなんとなく暖かい地方のランというイメージでしたが北海道にもあるのですね。大きな葉っぱに大きな花はまさしく威風堂々という感じですよね。源平合戦の「熊谷直実」に見立てたという説もありますが、勇ましいという見立てでしょうね。
因みにアツモリソウは「平敦盛」だそうです。

今年は高尾山でもクマガイソウを見ましたが、遠くからでもすぐに判る大きさでした。
Commented by meo_7 at 2017-06-06 23:14
てばまるさん、こんばんは。
どうやら、日高地方にも咲いているようです。
大型のランで見つけ易いのだろうけど、あまりに希少すぎて、滅多にお目に掛かれませんね。
 
北海道のアツモリソウは、盗掘の被害が甚大で、これもまた、出逢いは大変ですね。

野生欄の憧れは、続きそうです。


時々、想うこと…


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