神居尻山 6/5 花の山旅

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週末の天候は崩れ、花の山旅は、翌日、月曜日のウイークディに決行した。天気は回復し、青空が拡がった…。いつもは週末の悪天候を恨めしいと思うが、登山口近くの駐車場には2台の車しか駐まっていなく、つまり、快晴の下、静かな山の旅を約束してくれたようなものなのだ。
 
という僕は、今季初めての山登り、と言ってもよく、果たして登られるのか、という不安が無い訳ではない。今回、ママの他に、女性がひとり、同行してくれている。今回の旅の主人公だ。山への熱い想いが伝わる語り口に、逞しい山女を思い浮かべることもあるが、彼女は、そうではない…。印象は、ひ弱さえ感じるほどだ。まあ、僕より弱い人には、まだ出逢ったことがないから、本当に心配なのは、自分のことなんだけど…。
 
彼女は、自分ことを「のろま」と表現し、「だから、みんなに迷惑を掛けるのが…」と、語る。ペースなど、人それぞれだ。山行形態だって、それぞれだ。同じ時間を共有しても、想いまでは、共有出来ないものだ。そんな彼女の目を付けた標的が、僕たちだった。さあ、彼女の引いたおみくじは、吉と出るか、凶と出るか…。





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親子でもなく姉妹でもない、が、似てる…
 
 
出発前の、儀式のような写真を撮るのは、久し振りだ。親子にしては歳が近く、姉妹にしては離れすぎ。微妙な距離感だけど、似ている点が、ひとつある。所謂、「天然」と評される性格の一部だ。「天然」と評される大きな要因は、日常の行動の中で、ポカやドジが多いというか目立つというか、そういうことだと思う。しかも、それらが、ある種の愛嬌が伴わなければならない。このふたりは、その点、天才肌の「天然」ぶりを発揮する…。
 
そんなことは、どうでもよく、午前9時前、登山口を出発し、初夏の緑深い森の中へと入ってゆく。今回の旅は、今季から花の撮影を始めた彼女の、謂わば、デビュー戦のようなものだ。買ったばかりのミラーレスには、マクロレンズが装着されていて、先ず、ハード面では、万全な態勢だ。誰でも、そうなのだが、先ずは、美しく目立つ花に目がゆき、それを撮影する。それらは、有名な高山植物だったり、山を彩る風景の一部となって、人々に愛される…。それは、簡単に出会える場面だったりする。ま、体力が必要な場合は多いけど。
 
今回の目的は、花探しも含まれている。葉陰にそっと咲く小さな花、人知れず命を繋ぐ美しくも見えない花、ありふれて見向きもされない花、それらに、そっと近付き、その素顔を見ることも目的だ。誰もが、健気に生きている…。それを実感できたら、それは、よい旅だったと言える気がして…。
 
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頑張ります
 
 
神居尻山は、標高こそ低く、2時間ほどで登れる山だけど、激しい急登が待っている。それも、歩幅の合わない階段の登山道だったりする。今回は、タイムスケジュールは話し合っていない。勿論、僕のスマホには、計画は収められている。ママも、下山時間を訊ねない。天候は安定し、危険を伴う山でもない。余程のアクシデントがない限り、安全だといえる登山日和だった。そうであるなら、心の赴くまま、気の向くまま、大自然の中に、身を置いていたいと、それぞれは、思っていたのだろうか…。だから、急がない。ゆっくりと、歩を進め、足下に咲く花を追い掛ける…。
 
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キバナイカリソウ
 
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ルイヨウボタン
 
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ハクサンチドリ
 
 
急登を喘ぐと、稜線上に出る。彼女は、いくつかの山を登り、もっと雄大な風景を目にしている。山を登ることの喜びの中の、これも醍醐味のひとつであるし、それを主たる目的とする人は多い。僕だって、例外ではないから、過酷な山も経験してきた。今の僕たちは、こんな小さな山しか案内できないけど、彼女の旅はこれからも続く。僕たちと同じくらいの経験を積んで欲しい…。いや、それ以上になるに、決まってるけど…。
 
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山頂が見えてきました
 
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いい風景
 
 
神居尻山の山頂は、正面に捉えられるが、深い沢に行く手は阻まれる。道は、右に折れる稜線上を辿り、842mポコを目指す。標高差140mほどの緩い登りは、展望もあり、足下の花にも癒され、快適な散歩道だ。ママも心得たもので、適度な距離を保って先行する。僕もママも、彼女に近付くのは、花を見つけたりとか、撮影のポイントのヒントを語るときだけだ。なるべくなら、彼女の旅にしてあげたい。心ゆくまで、彼女自身の山を味わってもらうことだ。それがまた、僕とママの山旅の、喜びのひとつなのだ。
 
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正面が842mポコ
 
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増毛の山塊を背にプロムナード
 
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何想う…
  
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ツマトリソウ
 
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ミヤマキンバイ
 
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何か撮影していますね、行き倒れではありません
 
 
ポコにはベンチが設けられ、休憩所になっている。勿論、僕は、休む。標高は低いが、斜面の草原に拡がる花は、高山植物の範疇に入るものだ。それは、この山域が、厳しい環境に晒されていることを示す証だ。実際、6月だというのに、沢筋には残雪がある。ここから本峰には吊り尾根を辿り、最後の急階段の道が待っている。しかし、その道は、花々の咲く道でもある。
 
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ミヤマアズマギク
 
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コキンバイ
 
カラマツソウと会話しています
 
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何を語っているのか…
 
 
急な階段を登り終えると、道は、ゆっくりと左に向かい、展望は、更に拡がりを見せ、総てが顕わになってくる。これが、山頂到達のご褒美なのだ。勿論、天候に恵まれた日の限定だけど。では、雨やガスに包まれ、苦しい山行の果て、何も見えない山頂に辿り着くのは、何のご褒美も無いのかというと、それは、違う。こんな日には感じ得なかった、内面の喜びに出会えるはずだ。ご褒美は、純粋な達成感として、心に残るはずだから…。
 
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着きましたね
 
 
僕は、彼女と、こんな会話をしたことがある。
 
「幼い頃、お転婆だった?」

「はい…」
 
と答えた彼女は、その片鱗の一部を垣間見せた。山頂に着くと直ぐに、ザックを置き、山頂の裏側の道を下ったところに見える、避難小屋まで向かった。戻るときは、登り返しがあるのに、と思いながら、僕とママは、微笑んだ気がする。好奇心がいっぱいなのだ。好奇心は、無邪気が為せる業だ。案外、彼女の山は、壮大な冒険の旅になるような気がした。待ち受けるリスクは、徐々に覚えてゆけばよいのだ。誰もが、初めは初心者だ。臆したら、その旅は、終わってしまう。今の僕のように…。
 
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上機嫌で戻ってきました
 
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顔出しOKの許可をもらっています
  
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天然のふたり、大自然の中…
 
 
さて、山頂を後にします。多くの場合、下山は、目的を達成した所為もあって、ひたすら歩き続けるものだけど、彼女は、違っていた。小さな花を見つけて、何やら会話を続けている…。この時、僕は、今日の旅は、彼女の何かを変えてゆく、ささやかな切っ掛けになるような気がした。
 
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ヒメナツトウダイ
 
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エゾフウロ
 
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ツルシキミ
 
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ハクサンイチゲ
 
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タカネグンバイ
 
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キクバクワガタ
 
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ミヤマオダマキ
 
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孤高のキクバクワガタ
 
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旅人…

 
いったい、何時間、山の中にいたのだろう。山登りは、登頂して下山で終わる。そうなのだろうか…。山登りは、終わりのない旅を追い続けるから、意味のあるものではないのだろうか。最後の道を辿り、山頂へ到達する。でも、そこは、僕たちの旅の終着点ではないことに気付く。そこは、「夢」を繋ぐ、通過点だったことに気付く。次なる「夢」に向かって、旅人は、再び、歩き続ける。幾つもの「夢」を繋ぐことが、いったい、何処に、辿り着くということなのだろう。それは、抱き続けていた、「憧れ」の正体を知ったとき、旅人自身が手に入れるものなのだろう。
 
彼女は、直ぐに、僕たちから卒業する。彼女には、彼女の旅がある。その号砲を撃ったのが僕ではないにしても、その旅の途中で出会った変なおじさんとして、記憶の片隅に残り、何処か雲の上の頂きで、ほんの少しでも思い出してくれたら、それでいい。
 
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旅は、続くのです
 
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いいね
 
 
Nikon Df
AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
 
Leica D-LUX5


by meo_7 | 2017-06-08 00:50 | 登山(山岳徘徊倶楽部) | Comments(0)


時々、想うこと…


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