神居尻山 6/5 花の山旅

f0109977_18380126.jpg
 
 
週末の天候は崩れ、花の山旅は、翌日、月曜日のウイークディに決行した。天気は回復し、青空が拡がった…。いつもは週末の悪天候を恨めしいと思うが、登山口近くの駐車場には2台の車しか駐まっていなく、つまり、快晴の下、静かな山の旅を約束してくれたようなものなのだ。
 
という僕は、今季初めての山登り、と言ってもよく、果たして登られるのか、という不安が無い訳ではない。今回、ママの他に、女性がひとり、同行してくれている。今回の旅の主人公だ。山への熱い想いが伝わる語り口に、逞しい山女を思い浮かべることもあるが、彼女は、そうではない…。印象は、ひ弱さえ感じるほどだ。まあ、僕より弱い人には、まだ出逢ったことがないから、本当に心配なのは、自分のことなんだけど…。
 
彼女は、自分ことを「のろま」と表現し、「だから、みんなに迷惑を掛けるのが…」と、語る。ペースなど、人それぞれだ。山行形態だって、それぞれだ。同じ時間を共有しても、想いまでは、共有出来ないものだ。そんな彼女の目を付けた標的が、僕たちだった。さあ、彼女の引いたおみくじは、吉と出るか、凶と出るか…。





f0109977_19251460.jpg

親子でもなく姉妹でもない、が、似てる…
 
 
出発前の、儀式のような写真を撮るのは、久し振りだ。親子にしては歳が近く、姉妹にしては離れすぎ。微妙な距離感だけど、似ている点が、ひとつある。所謂、「天然」と評される性格の一部だ。「天然」と評される大きな要因は、日常の行動の中で、ポカやドジが多いというか目立つというか、そういうことだと思う。しかも、それらが、ある種の愛嬌が伴わなければならない。このふたりは、その点、天才肌の「天然」ぶりを発揮する…。
 
そんなことは、どうでもよく、午前9時前、登山口を出発し、初夏の緑深い森の中へと入ってゆく。今回の旅は、今季から花の撮影を始めた彼女の、謂わば、デビュー戦のようなものだ。買ったばかりのミラーレスには、マクロレンズが装着されていて、先ず、ハード面では、万全な態勢だ。誰でも、そうなのだが、先ずは、美しく目立つ花に目がゆき、それを撮影する。それらは、有名な高山植物だったり、山を彩る風景の一部となって、人々に愛される…。それは、簡単に出会える場面だったりする。ま、体力が必要な場合は多いけど。
 
今回の目的は、花探しも含まれている。葉陰にそっと咲く小さな花、人知れず命を繋ぐ美しくも見えない花、ありふれて見向きもされない花、それらに、そっと近付き、その素顔を見ることも目的だ。誰もが、健気に生きている…。それを実感できたら、それは、よい旅だったと言える気がして…。
 
f0109977_20502507.jpg
f0109977_20511988.jpg
f0109977_20514083.jpg
頑張ります
 
 
神居尻山は、標高こそ低く、2時間ほどで登れる山だけど、激しい急登が待っている。それも、歩幅の合わない階段の登山道だったりする。今回は、タイムスケジュールは話し合っていない。勿論、僕のスマホには、計画は収められている。ママも、下山時間を訊ねない。天候は安定し、危険を伴う山でもない。余程のアクシデントがない限り、安全だといえる登山日和だった。そうであるなら、心の赴くまま、気の向くまま、大自然の中に、身を置いていたいと、それぞれは、思っていたのだろうか…。だから、急がない。ゆっくりと、歩を進め、足下に咲く花を追い掛ける…。
 
f0109977_21122574.jpg
キバナイカリソウ
 
f0109977_21155894.jpg
ルイヨウボタン
 
f0109977_21164385.jpg
ハクサンチドリ
 
 
急登を喘ぐと、稜線上に出る。彼女は、いくつかの山を登り、もっと雄大な風景を目にしている。山を登ることの喜びの中の、これも醍醐味のひとつであるし、それを主たる目的とする人は多い。僕だって、例外ではないから、過酷な山も経験してきた。今の僕たちは、こんな小さな山しか案内できないけど、彼女の旅はこれからも続く。僕たちと同じくらいの経験を積んで欲しい…。いや、それ以上になるに、決まってるけど…。
 
f0109977_22222033.jpg
山頂が見えてきました
 
f0109977_22225439.jpg
いい風景
 
 
神居尻山の山頂は、正面に捉えられるが、深い沢に行く手は阻まれる。道は、右に折れる稜線上を辿り、842mポコを目指す。標高差140mほどの緩い登りは、展望もあり、足下の花にも癒され、快適な散歩道だ。ママも心得たもので、適度な距離を保って先行する。僕もママも、彼女に近付くのは、花を見つけたりとか、撮影のポイントのヒントを語るときだけだ。なるべくなら、彼女の旅にしてあげたい。心ゆくまで、彼女自身の山を味わってもらうことだ。それがまた、僕とママの山旅の、喜びのひとつなのだ。
 
f0109977_23004170.jpg
f0109977_23005352.jpg
正面が842mポコ
 
f0109977_23094130.jpg
増毛の山塊を背にプロムナード
 
f0109977_23105539.jpg
何想う…
  
f0109977_23041537.jpg
ツマトリソウ
 
f0109977_23045990.jpg
ミヤマキンバイ
 
f0109977_23054414.jpg
何か撮影していますね、行き倒れではありません
 
 
ポコにはベンチが設けられ、休憩所になっている。勿論、僕は、休む。標高は低いが、斜面の草原に拡がる花は、高山植物の範疇に入るものだ。それは、この山域が、厳しい環境に晒されていることを示す証だ。実際、6月だというのに、沢筋には残雪がある。ここから本峰には吊り尾根を辿り、最後の急階段の道が待っている。しかし、その道は、花々の咲く道でもある。
 
f0109977_23355467.jpg
ミヤマアズマギク
 
f0109977_23364523.jpg
コキンバイ
 
カラマツソウと会話しています
 
f0109977_23424550.jpg
何を語っているのか…
 
 
急な階段を登り終えると、道は、ゆっくりと左に向かい、展望は、更に拡がりを見せ、総てが顕わになってくる。これが、山頂到達のご褒美なのだ。勿論、天候に恵まれた日の限定だけど。では、雨やガスに包まれ、苦しい山行の果て、何も見えない山頂に辿り着くのは、何のご褒美も無いのかというと、それは、違う。こんな日には感じ得なかった、内面の喜びに出会えるはずだ。ご褒美は、純粋な達成感として、心に残るはずだから…。
 
f0109977_23540002.jpg
f0109977_23550570.jpg
 
f0109977_23554703.jpg
着きましたね
 
 
僕は、彼女と、こんな会話をしたことがある。
 
「幼い頃、お転婆だった?」

「はい…」
 
と答えた彼女は、その片鱗の一部を垣間見せた。山頂に着くと直ぐに、ザックを置き、山頂の裏側の道を下ったところに見える、避難小屋まで向かった。戻るときは、登り返しがあるのに、と思いながら、僕とママは、微笑んだ気がする。好奇心がいっぱいなのだ。好奇心は、無邪気が為せる業だ。案外、彼女の山は、壮大な冒険の旅になるような気がした。待ち受けるリスクは、徐々に覚えてゆけばよいのだ。誰もが、初めは初心者だ。臆したら、その旅は、終わってしまう。今の僕のように…。
 
f0109977_00090832.jpg
上機嫌で戻ってきました
 
f0109977_00112609.jpg
顔出しOKの許可をもらっています
  
f0109977_00141135.jpg
天然のふたり、大自然の中…
 
 
さて、山頂を後にします。多くの場合、下山は、目的を達成した所為もあって、ひたすら歩き続けるものだけど、彼女は、違っていた。小さな花を見つけて、何やら会話を続けている…。この時、僕は、今日の旅は、彼女の何かを変えてゆく、ささやかな切っ掛けになるような気がした。
 
f0109977_00235219.jpg
ヒメナツトウダイ
 
f0109977_00252888.jpg
エゾフウロ
 
f0109977_00245599.jpg
ツルシキミ
 
f0109977_00260042.jpg
ハクサンイチゲ
 
f0109977_00283899.jpg
タカネグンバイ
 
f0109977_00290842.jpg
キクバクワガタ
 
f0109977_00293453.jpg
ミヤマオダマキ
 
f0109977_00302577.jpg
孤高のキクバクワガタ
 
f0109977_00311566.jpg
旅人…

 
いったい、何時間、山の中にいたのだろう。山登りは、登頂して下山で終わる。そうなのだろうか…。山登りは、終わりのない旅を追い続けるから、意味のあるものではないのだろうか。最後の道を辿り、山頂へ到達する。でも、そこは、僕たちの旅の終着点ではないことに気付く。そこは、「夢」を繋ぐ、通過点だったことに気付く。次なる「夢」に向かって、旅人は、再び、歩き続ける。幾つもの「夢」を繋ぐことが、いったい、何処に、辿り着くということなのだろう。それは、抱き続けていた、「憧れ」の正体を知ったとき、旅人自身が手に入れるものなのだろう。
 
彼女は、直ぐに、僕たちから卒業する。彼女には、彼女の旅がある。その号砲を撃ったのが僕ではないにしても、その旅の途中で出会った変なおじさんとして、記憶の片隅に残り、何処か雲の上の頂きで、ほんの少しでも思い出してくれたら、それでいい。
 
f0109977_00480837.jpg
旅は、続くのです
 
f0109977_00483414.jpg
いいね
 
 
Nikon Df
AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
 
Leica D-LUX5


by meo_7 | 2017-06-08 00:50 | 登山(山岳徘徊倶楽部) | Comments(0)


時々、想うこと…


by MIURA@オイちゃん

プロフィールを見る
画像一覧

カテゴリ

全体
登山(山岳徘徊倶楽部)
僕と音楽
徒然に…
ちょっとした旅
カメラ
山の道具あれこれ

最新の記事

昆布岳 落ち葉の登山路 20..
at 2017-10-21 17:47
白雲山・天望山(後編)アルペ..
at 2017-10-02 01:59
白雲山・天望山(前編)アルペ..
at 2017-10-01 00:32
大雪山紅葉の旅 プチ縦走(後..
at 2017-09-20 13:46
大雪山紅葉の旅 プチ縦走(前..
at 2017-09-19 05:24
道東弾丸ツアー 斜里岳(後編..
at 2017-09-13 20:47
道東弾丸ツアー 斜里岳(前編..
at 2017-09-13 11:23
道東弾丸ツアー 西別岳・リス..
at 2017-09-12 21:29
白樺山〜シャクナゲ岳 プチ縦走
at 2017-07-28 23:02
花の山旅 ニセイカウシュッペ..
at 2017-07-27 14:01

以前の記事

2017年 10月
2017年 09月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 02月
2016年 12月
2016年 10月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 01月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 01月
2013年 11月
2012年 07月
2010年 01月
2006年 12月
2006年 11月

お気に入りブログ

やぁやぁ。
風街角
pode ser um ...

外部リンク

お薦めのホームページ

最新のコメント

翼さん、こんにちは。 ..
by meo_7 at 16:33
トップの写真、演出かもし..
by windy1957 at 10:33
てばまるさん、こんにちは..
by meo_7 at 22:16
いや~~~~~素晴らしい..
by てばまる at 15:15
yahさん、こんにちは。..
by meo_7 at 19:28
三浦さん、こんにちは! ..
by yah-_-yah at 14:50
翼さん、ありがとうござい..
by meo_7 at 11:39
いいね、やっぱり。 不..
by windy1957 at 10:23
てばまるさん、こんばんは..
by meo_7 at 23:14
クマガイソウというとなん..
by てばまる at 22:04
翼さん、まったくその通り..
by meo_7 at 20:30
辛い思いをしても逢えず仕..
by windy1957 at 17:33
てばまるさん、こんにちは..
by meo_7 at 16:13
このローアングルからする..
by てばまる at 09:29
翼さん、ホント、野に咲く..
by meo_7 at 14:49

検索

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

登山
カメラ

タグ

画像一覧

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31