大雪山紅葉の旅 プチ縦走(後編) 2017/09/16

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 北海岳を後にすると、大雪山の雄大さが実感できる。風景は、ただ拡がり、大平原を歩くかのような、のんびりとした気持ちになる。但し、風が強い日に歩いたことがあるが、逃げ場所もないので、恐怖さえも感じる。山とは、そういうものだと、思い知らされる。天国と地獄を体感できるというべきか…。        
 
 この日、風は穏やかで、青空と白い雲、稜線を闊歩する旅人たち、その総てが、1枚の絵画になる。デジタルカメラの恩恵なのか、シャッターを切る回数が多くなり、歩みは、一向に進まない…。時刻は、午前11時半を過ぎていた…。





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北海岳を振り返る
 
 
 黒岳から北海岳の道のりは、紅葉の彩りで飾られていたが、大雪山の、本当の屋根に辿り着くと、樹木は這松しか無く、赤い彩りは、極端に少なくなる。一見、荒涼とした風景の思われるけれど、それが、北海道の屋根、大雪山の姿だ。草紅葉が拡がり、チングルマやウラシマツツジの深紅が彩られる。這松の緑がアクセント…。地味な色合いもまた、秋の風景だ…。
 
 
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チングルマ
 
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縞模様
 
 
 荒涼とした台地の中を、登山路は細々と見え、白雲岳の裾野へと続く…。個人的な感想を言うと、白雲岳は、名前から想像する雰囲気に見えたことはない。いつも、黒い塊にしか見えない。岩が積み重なって出来た山塊だからなのか、植生が乏しいのが理由かも知れない。

  
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白雲岳へと…
 
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裾は草紅葉が輝く
 

 
 白雲岳の分岐に着いたとき、午後12時半だった。ママは、しきりに、時間を気にしている。銀泉台からの最終バスが16時30分だからだ。充分に間に合うのだけれど、ママは、極端な心配性で、気が急くのが特徴だ。その所為で、急がされることは、数え切れないくらいある。午後1時に、ここを出発することにして、カップ麺とおにぎりで、昼食を摂る。
 
 
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まあまあだった…
 
  
 約束通り、1時に分岐を出発する。花の時季には、様々な花に彩られる小泉岳は、草紅葉も疎らな、荒涼とした台地にしか見えない…。その緩やかな登りを終えると、目の前に東大雪の山並みが拡がり、赤岳への登山路を辿り、日常への道へと続く。人はそれぞれ、日常と非日常の分岐点を持っていると思うけど、僕の場合、こんな場所だったりする。そんな場所を、行ったり来たりして、平常心を保っているのだろうか…。

「また来るよ…」

と、思う場所が分岐点なのだと、遠い或る日、感じた時のことを、想い出した…。
 
 
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浪漫…
 
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赤岳へ

 
   
 マイカー規制の所為か、午後の登山路に、旅人たちの姿は少ない。黒岳の混雑ぶりが嘘のようだ。僕は、山では、人が多くてもいなくても、どちらも、それなりに好きだ。混雑を嫌う人もいるけれど、その中の一員になっている現実と矛盾しているよね。最近は、街の車の渋滞にあたっても、イライラしなくなったのは、歳の所為なのかな? 時間に追われなくなった生活になったからかも知れない。その点、ママは、まだ、時間に追われる生活の真っ只中だ。今も、早足で、赤岳に向かって、まっしぐら…。
 
 さすがに、赤岳山頂は、まだ、多くの旅人たちが憩っていた。ママは、そこもスルーをする。まだ、自分の「安心」出来る時間じゃないのだ。こんな場合、何をいっても無駄なので、写真を撮る閑もないくらい急がされている…。実際、写真が無い…。
 
 赤岳山頂を後にして、稜線の這松を潜り抜け、第四雪渓を見下ろすと、そこには、再び、紅葉の絶景が拡がる…。さすがに、僕も、カメラを構える。何のために、こんなに時間を費やしてまで、ここを訪れているのかを、思い出すわけだ。今、見える風景は、当たり前のことだけど、この時間、ここにいる、という現実だけが、それを約束してくれる。昨日とも違い、明日とも違う。来年同じ日、同じ時間に訪れても、この日の風景は見られない。写真を撮らないママには理解出来ないわけだけど、その逆も言える。力関係で、僕が従うというのも、自然の摂理…。
 
 
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第四雪渓を見下ろす
 
 
 ママは、第四雪渓も急いで下っている。ホントにヘルニア持ちなのか? と思うことがあるけど、確かに、軽快には見えなくなり、どこか、ぎこちない動きになっている事は確かだ。僕は、登りは弱くなったけど、まだ、下りでは人並みのスピードで下ることが出来る。写真を撮りながら、ママについて行くわけだから、トップスピードは、僕の方が速いわけだ。なんてことで、自信を取り戻したりする…。
 
 
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第四雪渓を見上げる
 
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第三雪渓の下り口
 
 
 帰路のハイライトが近付く。第三雪渓の景観が見えてくると、秋の色は、鮮やかになり、拡がる…。午後の光は、アンバー色を色濃くする。光を浴びたダケカンバや草紅葉の輝きが一際鮮やかになる。その分、赤の鮮やかさは色褪せるけれど、それも、風情だ…。
 
 
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第三雪渓上部から駒草平方面
 
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旅人たちも見えます
 
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絶景が拡がる
 
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中間部から見下ろす
 
 
 ここも、紅葉の最盛期だった。雲の動きと共に、山肌に光と影が、その模様を変える。光を浴びた色彩は輝き、本来の色を見せてくれる。花の季節は、僕の視野は狭まる。小さな花を探すからだ。でも、秋は、雄大な風景を見ていることに気付く。改めて、こんな風景の中を歩いていたのかと思うのが、僕の、秋の山だったりする…。
 
 
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黄葉の向こうに、東大雪の山並み…
 
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第三雪渓の全景…
 
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スポットライト
 
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ズームアップ
 
 
 ママは、駒草平で、やっと立ち止まった。腰を下ろし、珈琲を飲む。もう、時間の心配は取り除かれたらしい。意外に、僕は、平気だった。やはり、暑くないからだろう。思えば、時折飲んだ珈琲とカップ麺のスープ以外に、水物の飲料は、スポドリの一口か二口だけだった。以前から、あまり水分を摂らないので、だから脚が痙るんだ、なんて言われ続けていたけど、今日は、脚も快調だ。
 
 
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枯れ葉にコマクサ…2度目の開花ですね
  
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神の田圃
 
 
 駒草平を下ると、奥ノ平は直ぐに到達する。遅くまで残っている雪渓も小さくなっている。もう消えることなく冬を迎えるだろう。遅い春を迎えた奥ノ平に、まだ、晩夏の花が咲いている。短い命を、来季に繋げられるのだろうか…。
 
 
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ナナカマド越しのニセイカウシュッペ山
 
 
 第二花園でも、遅咲きの花が咲いていて、撮影しながらも一気に下りた。もう、僕たちの心は、今回の旅の目的は、ほぼ終えたと感じているのだろう。それは、既に、日射しは傾き、その光の勢いを弱め、徐々に、くすんでゆく色を感じたからだろう。
 
 
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最後の斜面は陰っていた…
 
 
 第一花園の登山路で、幾人も追い越して、最後の樹林帯に入ってゆく。もう、この道は、数え切れないほど歩いた。振り返ると、尾瀬に始まり、僕の山は、40年を迎えようとしている。その半分は、大雪山の何処かだったような気がする。花を追い掛ける山だったから、山選びにも特徴があるのかも知れない。自分のスキルも考えずに、そこに逢いたい花があるからという理由で、沢装備を揃えたり、クライミングを始めたり…。運任せの時代もあったことを思い出す。僕が、山を始めた頃、そこには、自由があった。今では、そこはダメ、あそこもダメ、それをしてはダメ、あれもしてはダメと、色々な規則が出来上がった。それもこれも、僕と僕の時代を生きた登山者にも責任があることを免れることは出来ない。夕張岳だって、ロープの張られていない時代、踏み跡を辿り、あちこちと彷徨い、花を探した。勿論、植生を傷めないように、細心の注意を払っていたにしても、結果、夕張岳の植生は傷つけられ、裸地と化した箇所もある。僕は、ロープが張られてからの夕張岳には、数回しか行っていない。行かないことが、罪滅ぼしになるという正解を知ってしまったからだ。大自然と人間の関係は、難しい問題を含んで、共に生き続ける…。
 
 樹林帯は、木々の間から垣間見える色彩が、幾重にも折り重なって、不思議な感覚になる。秋ならではの光景の中、僕たちは、もう直ぐ、この山旅を終える…。
 
 
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きっと、今日最後の光を浴びるダケカンバの黄葉
 
 
 当然だけど、バスの時刻には、充分に間に合った。最終バスではなかったのだから…。今季の黄葉は綺麗だという噂は、本当だった。特に、黄色が素晴らしい。一気に冷え込んだのと、霜や雪にやられなかったことが幸いだったのだろう。2日後には台風が上陸するという。これが見納めかも知れない。木々の葉は舞い落ち、登山路には、落ち葉の絨毯が敷き詰められるだろう。それを踏みしめながら歩く山旅も、僕は好きだ。振り返るといつも思う…。今年も夏は短かったなあ…と。
 
(完)



Nikon Df
AI AF Zoom-Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF

by meo_7 | 2017-09-20 13:46 | 登山(山岳徘徊倶楽部) | Comments(2)
Commented by てばまる at 2017-09-20 15:15 x
いや~~~~~素晴らしい紅葉ですね!!
一度歩いた道なので余計に見入ってしまいました。秋にはこんなになるんですね~!! 秋も訪れたいですが、夏に行くのもままならない懐具合なので、あぶく銭でも入れば歩いてみようかな・・・(^^;)
尾瀬の紅葉はまだどうなるか判りませんが一気に冷えると綺麗かなと期待しています。

Commented by meo_7 at 2017-09-20 22:16
てばまるさん、こんにちは。
今季の紅葉は、凄まじいくらいの色合いでした。
傷んでいるものが殆ど無く、総てが完璧だと言えるくらいです。
でも、台風が過ぎ去りましたから、今は、どうなっているでしょうね。
ナナカマドやダケカンバの葉は飛ばされてしまったかも知れません。

是非是非、一度、大雪山の秋を訪れてみて下さい。


時々、想うこと…


by MIURA@オイちゃん

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