昆布岳 落ち葉の登山路 2017/10/19

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宝石のような落ち葉
(彼女の撮影)
 
 
 秋深まる北海道では、大雪山など標高の高い山々に雪が降り積もり、頂きでは、白い輝きを放っている。低山の紅葉も、徐々に麓まで下りてきて、秋色の絨毯の彩りも拡がってゆく…。僕たちは、ニセコの一角にある昆布岳に向かった。それは、ニセコの他の山々から、いつも、存在感たっぷりの山容を見せてはいるが、僕たち3人は、みんな未踏の山だった…。さっちゃんと僕は、今回の主人公でもある彼女の山行を見守る、という役割を持って結成されたパーティーの、謂わば、サポート役である。でも、断っておきますが、この中で、一番力が劣っているのは、言うまでもなく、僕です…。





 数日前から、札幌市内から見える手稲山にも初冠雪の便りが届き、ある程度の寒さを覚悟して登るようにと、連絡網で語ったのは、僕だった。しかし、登山口に着いたとき、穏やかな日射しは意外に暖かく、冬山装備に身を包んだ彼女は、少し、恥ずかしそうにしていたが、その責任は、僕にある…。
 
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登山口
 
 
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 登山道は、作業道としても使われているようで、車両が通れるような広い道だった。その広い登山路は、既に、色とりどりの落ち葉に埋め尽くされ、さながら、絨毯が敷き詰められているようだった。カサカサと音を立て、一歩一歩が秋を踏みしめる音となり、その歩みが、聴覚に伝わる…。秋ならではの感覚なのだろう…。しかし、その乾いた音の下は、数日前に降り積もった雪が解けた後か、それとも、冷たい雨の後か…、粘土質の土は、よく滑るのだった。油断大敵の登山路では、あった…。
 
 
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秋色の絨毯…
 
 
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(彼女の撮影)
 
 
 標準タイム3時間の登山道は、概ね、緩やかな登りが続く。その分、なかなか標高は稼げないのだけど、身体に優しいのは確かだ。淡々と登るのではなく、途中に、「めがね岩」などというイベントが待ち構えていたり、多少のアップダウンがあったり…、それはため息に変わるものでもあるけれど…、一筋縄ではいかない…。合目表示は、丁寧に、一合ずつに表示されている。それは、確かに、目安にはなるけれど、疲れてくると、「まだ、三合目なのか…」などと、落胆する表示だったりする…。ま、僕だけだろうけど…。
 
 
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必ず撮影されるツーショット
   
 
 
 1時間ほど歩くと、辺りの木々は落葉が進み、鮮やかな色から、枯れ葉色の風景に変わってゆく…。その、少し、もの悲しさを漂わせる木々の間から、目指す昆布岳の姿も捉えることが出来た。
 
 いつもは、サッサと歩くさっちゃんも、ゆっくりと歩いてくれている。彼女も、今日は、のんびりと歩いている。久し振りの山なので、思いっきり、山に浸っているかのようだ。忠別岳の凄まじい紅葉の旅を経験した彼女にとって、ニセコの紅葉は物足りないかも知れないけど、これはこれで、雰囲気は楽しめる…はずだ…。カメラを構えて、何か真剣に撮影している姿を見ると、山の楽しみ方のひとつとして、身に付けてくれたら、と思う。

 今時のカメラは、画像は破綻なく写してくれる。もう個性は、構図だけなのかも知れない。多少の露出補正を加減して、構図を決めてパチリ…。そんな時代になったからこそ、写真は、難しくなったと言えるかも知れない。誰が撮っても同じ、という写真が溢れているもんね…。
 
 僕は、彼女に、「こんな風に…」とか、「ここはこうすると良いよ…」とか、構図のアドバイスはしない。最初の頃、大まかな説明はしたと思うけど、基本、撮影前の構図については、彼女の感性に任せることにしている。撮影後の感想を求められたりしても、それは、実は、僕の好みであったりするわけで、彼女の意図の総てを読み取れるわけではない。だから、僕は、同じ被写体を撮影して、それを見せ合ったりするわけだ。それは、互いの引き出しを開けてみることであり、自分と違う感性を知る事にもなる。彼女はよく、僕の写真のように撮りたい、と言ってくれるが、その逆だって、いくらでもある。彼女のアングルに、ハッとしたことなど、何度でもあるのだ。お互いが、それで引き出しが増えていくのなら、それで良いと思っている。
 
 
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こんな光景
(さっちゃんの撮影)
 
 
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朽ちたダケカンバに、秋の彩り…
 
 
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ツタウルシ絡まる秋…
(彼女の撮影)
 

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(彼女の撮影)

 
 
 午前11時ちょっと前、「めがね岩」という場所に着いた。登山道の直ぐ横なのだが、いきなり岩が露出して、一角に、大きな穴が開いている。それを、めがねと見立てたのだろう。薄い踏み跡を辿り、先ず、高いところ、ちょっと危ないところなどが大好きな、さっちゃんが、行った。そして、憶病なクセに好奇心いっぱいの彼女が続く…。僕は余裕の態度を見せてはいるが、実は、安全安心を確認してからいこうと思っている、真の憶病者なのだった。
 
 
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ここで、アルペン踊り
 

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(さっちゃんの撮影)
 
  
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(彼女の撮影)

 
 
    
 この裏側は、結構な絶壁だった。ということは、僕も行ったわけで、面目躍如ということになった…かどうかは分からない…。大自然の不思議な造形美を垣間見て、僕たちの、あまりにのんびりな旅は、続くのだった…。
 
 
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昆布岳が見える…
 
 
 実は、三合目位から感じていた右臀部の股関節辺りの痛みが辛くなってきていた。押さえると、明らかに、その患部が分かった。この部位の痛みは初めてだったので、多少の不安があった。でも、僕には、重大な任務がある。この天然のふたりの山頂でのアルペン踊りを撮影することだ。一応、ふたりには、控え目に、足の不調を訴えておいた。そのことで、さっちゃんは、益々、ゆっくりとしたペースを保ってくれていたのかも知れない。幸運にも、下るときは、大きな段差でもない限り、殆ど痛みは感じなかった。登り切れば、必ず、下りられるという確信で、頑張ることにした。
 
 やがて、八合目辺りから、登山道は急になり、右足が上がりにくくなった僕を苦しめたが、何故か、途中で諦める気にはなれなかった。九合目で、道は平坦になり、最後は稜線に上がる急登を頑張れば、山頂へと到達する。
 
 
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左側の稜線に上がり、右奥に山頂標識…
 
 
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頑張る彼女…
(さっちゃんの撮影)
 
 
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頑張った僕…
(さっちゃんの撮影)
 
 
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任務完了!
 
 
 山頂は、思ったほど寒くはなかった。先着したふたりは、何を話していたのやら、既に、上機嫌だった。昆布岳の山頂標識は、噂通り、やっぱり、昆布の形をかたどっていた。僕は、特段、それに感激もしないけれど、彼女たちは、そうでもないらしい…。
 
 
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(さっちゃんの撮影)
 
 
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(さっちゃんの撮影)
 
 
 午後13時過ぎ、下山を開始する。遅いランチは、九合目の平坦な場所と決めていた。そこを、「ラーメン会場」と名付けて、彼女は、喜んでいる。一目散に、向かうのだった…。やはり、下山時は、僕の足の痛みも緩和されていて、助かった…。
 
 
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下山は、雄大な風景を見ながら…
 
 
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ランチ
 
 
 昆布岳には、昆布のおにぎりでしょう!と、言っておいたのに、持ってきたのは僕だけだった。足並みを揃えない、という暗黙の了解でも出来上がったのかな? 思えば、不思議なパーティーだ。細かい決めごともなければ、いつも同じ行動をするわけでもなく、それぞれが、それぞれの時間を過ごす。それでも、バラバラ感はなく、互いは、互いの動向を見守っているからなのだろうか。結束を誓い合っているわけでもないのに、不思議な一体感はあるのだった。カッコ良く言えば、心が繋がっているということか…。信頼関係というものは、こういった感じをいうのだろう…。
 
 ちなみに、ガスストーブとコッフェル、水を担いできたのは、一番若い彼女です。若いからという理由で持ってもらうのではなく、自ら進んで手を挙げてくれるのです。いや、ホントだってば!
 
 戻る道、再び、秋の彩りの中に導かれ、僕たちの歩みは、遅くなる…。紅葉は、午後の光の方が暖色系を柔らかに表現するので、美しく見える。彼女は、憧れのさっちゃんと肩を並べて歩いている。強靱な体力と脚力を持つさっちゃんだから、憧れられているわけではない。その人となりに憧れている。何をするにも、凄いことをしているときにも、飄々としている。この日、さっちゃんは、「サイボーグ」と、密かに、名付けられていることを、知らない…。
 
 
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仲良し…
 
 
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言葉が、無い…
 
 
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秋彩に埋もれる…
 
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 秋の陽はつるべ落とし、と言われている通り、傾いた日射しは、急激に、その勢いを弱めてくる。ダラダラと続く長い下山路だけど、不思議に、飽きてこない。それどころか、僕たちは、急ぐわけでもなく、残り少ない秋の風景を惜しむかのように、ゆっくりと歩くのだった…。
 
 北国の秋が終わると、長い冬が訪れる…。さっちゃんはスキー、彼女はスノーシューと、冬山に入るアプローチ手段は違うけれど、同じフィールドに入ることはあるのだろうか…。ふたりとも、厳冬期の厳しい環境では、山自体を楽しめないことを知っている。冬山のエキスパートになる気は、今のところ、無いようだから…。穏やかな冬の或る日、ふたりは、白いモンスターの樹林を歩くことがあるかも知れない。森林限界を超え、真っ青な空の下、白い斜面にトレースを刻む日が訪れるかも知れない。北海道の冬のアウトドアを楽しみたいのなら、ある程度のリスクを覚悟で、山に入る訳だ。しかし、無茶さえしなければ、沢を遡行し、藪を漕ぐより安全だとも言える。危険なのは、道迷いと、雪崩のリスクなのだ。前者は、GPSを使いこなせば回避できるし、後者は、急斜面や、その下を通過しないことに気を付けたりすれば、ある程度回避できる。所謂、誘発雪崩れについて、少し、知識を得ることだ。
 
 登山は、生きて還ること、それだけだ。だからといって、冒険の領域に踏み込まないのでは、それは、日常と変わらない。結局、非日常を追い求めての登山だということは、素直に受け容れよう。何処までが、自分の限界なのか、それは、確かめてみなければ分からないという、ある種の矛盾の中に、アウトドアライフは、ある…。限界を感じたとき、それは、直ぐに引き返すことを意味する。限界を超えたとき、それは、危険の真っ只中にいることを意味する。そして、一番重要なこと…、その限界値は、人それぞれであるということ…。つまり、自分の限界は、自分しか分からないし、言い換えたら、他人の限界も分からないということ。ここに、冬山を含めた、登山に於いての、パーティーの在り方に繋がるわけだ…。自分は大丈夫でも、人は大丈夫でないかも知れない。自分が大丈夫でなくても、訊ねられたら、「まだ大丈夫です」と応えてしまうのが人の常だったりする…。
 
 きっと、僕たちは、そんなことも学びながら、山を続けてきただろうし、これからも続けてゆくだろう…。人生でもそうだけど、順風満帆では、リスクに出遭ったときの対処が分からなかったりする。ある程度の失敗を重ねた方が、経験値は大きくなるというのも真理だったりする。今の僕たちの安全にしたって、多くの人の失敗や、数え切れない命と引き換えに得られたものなのだから…。
 
 生きて還ること、それは、数多の命と引き換えに得た、僕たちの安全のためにも、心して、肝に銘じようと…。
 
 
 あれー? 話が重くなってきたのは、僕の足が重くなってきたのとは関係ありません。いつもいい加減なこと書いては顰蹙を買うばかりなので、ちょっと、いいフリこきを…。何はともあれ、僕たちの昆布岳登山も、無事に終わり、登山靴を脱ぐ。この瞬間の快感が、実は、麻薬のように、山を続けられる理由のひとつかも知れない。そんなことは、ないか…。
 
 一路、「まっかり温泉」に、車を走らせ、約1時間の入浴タイム…。計画通り、お目当ての中華屋さんに向かうも、何故か、休業中だった。ここで、僕が綿密に練った計画も頓挫したわけだけど、直ぐ近くに、ラーメン屋さんがあった。幸運の女神から見放されたわけではなかった。さっちゃんには、ビールを飲ませなければ、機嫌が悪くなる。例によって、ビールと水で安着祝いの乾杯をする。帰り道、いつもは眠る彼女も起きていた。きっと、昆布岳程度じゃ、物足りなかったのかな? とにかく、小さな身体に、スタミナと食欲だけは、僕より上等なのだ。あ、食欲は、余計だった…。おしゃべりは、ずっと続き、札幌の街の灯りに吸い込まれ、僕たちの山旅は、終わった…。
 
 
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敢えて、ビールは写さなかったのか…
(さっちゃんの撮影)
 
 
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(彼女の撮影)
 
 

(完)

by meo_7 | 2017-10-21 17:47 | 登山(山岳徘徊倶楽部) | Comments(0)


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