遙かなるトムラウシ Day1 プロローグ(2015/9/15)

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昔は、いや今でもそうかも知れないが、大雪山のトムラウシ山を、「遙かなる山」と形容した。辿り着くまでの道は、幾通りかある。表大雪から高根ヶ原を歩いて行く、ロング縦走。天人峡から化雲岳を経て、尚も遠いトムラウシの頂き。クチャンベツの登山口から、沼ノ原、五色ヶ原などの風景を楽しみながら歩くも、まだ、トムラウシは遠い…。美瑛から扇沼山経由でトムラウシを目指すのも、最近人気になっているが、これも、遙かなる道だ。クワウンナイ川を遡行し、トムラウシへ向かうルートもあるが、当然、沢登りが必要となる。新得側の東大雪荘からのトムラウシが一番近い。近年、短縮路が出来て、普通の登山者にも、日帰りが可能になった。若い頃(僕にもありました)、まだ、短縮路のない時代、東大雪荘からピストンをしたのが初めてだった。それは、行って帰ってくるだけの、何も記憶に残らない山行だった。翌年、僕は、単独で、カメラ2台、三脚を担いで天人峡からヒサゴ沼を目指した。テントは、ダンロップのV-300という3キロ超の代物だった。カメラが2台というのは、当時はフィルム時代だったので、コダックと富士フイルムを装填した2台を用意した。若かったとはいえ、20数キロを背負った33曲りは苦痛だったし、ヒサゴ沼に辿り着く頃は、ヨレヨレだった。しかし、その翌日は、最高の天気に恵まれ、トムラウシの全貌を楽しむことが出来た。
 
トムラウシは、遙かなる山でありたい。そう勝手に思い込む自分がいた。数年後、オプタテ山を越えて、幾つもの峰を辿り、トムラウシに向かう僕らがいた。旭岳から白雲、ヒサゴ沼、トムラウシ、そして天人峡へ下るという縦走も経験した。南沼のテン泊には、当時中学生になったばかりの娘も参加して、2泊3日を楽しんだ。娘の山は、これで卒業させ、普通の暮らしへと戻らせた。
 
トムラウシには、何度訪れたか正確には分からないくらいだ。その中でも、沼ノ原、五色ヶ原を経由する道が、ママのお気に入りになった。今では、五色ヶ原も笹が侵入し、往年の、広大なお花畑は見られなくなったのは、残念だ。それでも、形のよい山容を眺めながら、歩けども歩けども近付かないトムラウシ…。それは、浪漫、そのものになった…。
 
 
さて、前置きが長くなってしまいました。そんな、僕たちのトムラウシも、名実共に、「遙かなる山」になっていた。数年前、新得側から登った時は、コマドリ沢の下降辺りで撤退した。それがトラウマとなり、クチャンベツから登った時も、忠別の避難小屋までが限界で、トムラウシを遠くから眺めるだけの山行になった。
 
行けなくなったことを、受け容れがたいと思ったりするのは、中高年の性なのかも知れない。僕にも、それは当て嵌まったりする。年寄りの冷や水なのだ。先ず、受け容れるべきことは、もう、正真正銘の「年寄り」なのだ、という現実だ。そこで、年齢相応の計画を練ることにした。どうだ、賢いだろ!
 
先ず、沼ノ原の大沼で1泊、2日目にヒサゴ沼まで、3日目にトムラウシ往復、4日目に下山という計画は、一日余分に山にいるというだけのことだ。食料の分が重くなるだけで、初日と2日目の歩行距離は短くなる。問題は、天候だけだ。4日間も晴天は続くことは稀かも知れないが、それが最優先だ。毎日、天気予報を眺めながら、決行の日を探る…。そして、9月15日朝、クチャンベツの登山口を出発する。




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登山口を出発
 
 
沼ノ原に泊まるのに、出発が朝早いのは、大沼の幕営地が設営可能かどうか分からないからだった。大沼は、増水すると、幕営出来る場所が無くなる。ここのところ雨模様の天候も続いたので、自信が持てなかった。もし、ダメだったら、最低、忠別の避難小屋まで歩かなければならないから、駐車場で前泊したわけだ。しかし、準備していると、丁度下山してきたカップルがいて、テン泊装備だったので訊ねてみると、大沼でテントを張ったと答える。水は、充分引いているという情報は、僕たちの気を楽にしてくれた。同時に、すっかりと、のんびり気分になった…。
 
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徒渉
 
 
以前は、沢沿いに道があったが、大雨による増水で登山道が流出したり、徒渉が困難になって、巻道が作られた。これが、帰りには最後の登り返しになるので、地味に辛い…。巻道が終わると、徒渉があり、古くからの登山道に合流する。道が沢から離れてゆくと、静寂が、僕たちを包む。平日だから、登山者は多くない。日帰り装備の数人が追い越してゆく。
 
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何気ないショット
 
 
1時間ほどで、急坂になる。沼ノ原までの道で、唯一の頑張りどころだ。今日は、標準タイムで3時間ほどの距離を歩くだけだ。僕たちの計画でも4時間としている。急ぐ旅でもない。
 
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結構な急坂です
 
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葉が色付いてきた
 
 
標高が上がると、山は、秋らしい色合いになってくる。紅葉は、上から始まる。つまりは、紅葉へと分け入り、向かう山旅なのだ。赤く色付いた木々を見掛ける度に、ママの嬌声が上がるようになる…。
 
急坂を終えると、道はなだらかになり、ぬかるんだ道が木道に変わると、いよいよ、沼ノ原への入口だ。沼ノ原は、広大な高層湿原が拡がり、周囲には石狩連峰やニペソツ、遠くには表大雪の山並み、そして、名峰トムラウシが、悠然と聳え立つ、一級の別天地だ。しかし、幾度か訪れている僕たちも、その全貌を見られることは、そんなに多くはない。霧にむせんでいたり、雨が降っていたりと…。
 
今日、雲は多く、今にも降り出しそうな気配だったが、運は、僕たちの方にあった。草紅葉に色を変えた湿原が拡がり、周囲の山々も姿を見せている。
 
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先ずは、小さな湿原へ
 
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そして、沼ノ原への木道の上へ…
 
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秋色に染まったトムラウシ
 
 
ひときわ目を惹くのは、やはり、秋色に染まったトムラウシだった。意外に大きく見えるので、直ぐ近くと思えるが、その正体を知ってしまうと、懐の広さの分だけ大きいのだと分かる。同時に、僕のちっぽけな存在も、思い知らされるわけだけど…。
 

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雲が夏雲なので心配だ…
 
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右側の双耳峰がニペの耳と呼ばれる
 
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ツルコケモモの実
 
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暗雲が垂れ込みます
  
 
沼ノ原の木道は、湿原の北側から入り、東側、南側の淵を回り込むように、大きく迂回する。ただでさえ大きな湿原だから、抜けるのに、結構な時間を要する。途中に分岐があり、そこから笹の覆い被さった道を辿ると、ニペの耳を経て、石狩岳までの縦走路に入ることになる。そのまま木道を辿れば、大沼の野営指定地に着く。
 
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トムラウシ山
 
  
どんなにゆっくりしても、テントを設営し終えたとき、まだ、午前10時過ぎだった。時間が有り余っている。珈琲など飲んだり、本を読んだりしていると、小雨が降ってきた。それは、霰に変わり、フライシートで跳ね返り、パラパラと音を立てる。地面にも、小さな白い粒がばらまかれる…。後で知ったが、この日、黒岳で初雪が観測されたという…。その後も、降ったり止んだりが続いた。早い出発のお陰で、雨に当たらなくて済んだわけだ。些細な幸運を喜ぶ僕たちは、もう既に、山男、山女じゃないね…。
 
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増水すると、これが水没する
 
 
時間を持て余した僕は、小雨が上がると、散歩に出掛けたりするが、ママは、すっかりとテント番に収まっていた。家にいると、なんやかんやで、のんびりすることも出来ないが、こんな時間が、ママの至福の時かも知れない…。
 
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風は穏やかです
 
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ホロムイソウの実
 
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タチギボウシの実
 
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石狩連峰
 
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秋の点景
 
 
その後、単独の人がテントを張っただけで、さすがに、平日の静けさだ。夕景も期待通りには拡がらず、明日の好天を約束してくれなかった。夜半、雨が降り続き、風がテントを揺らした。一抹の不安を抱きながら、僕たちは寝入った…。
 
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夕景


by meo_7 | 2015-09-19 18:52 | 登山(山岳徘徊倶楽部) | Comments(2)
Commented by yah-_-yah at 2015-09-19 20:11
こんにちは!
僕はてっきりヒサゴに2泊だったのかと思ってました。
沼ノ原で1泊して合計3泊だったのですね!
ここからトムラウシを入れて星景写真など撮ってみたいものです。
それにしても紅葉したトムラウシが美しい!
Commented by meo_7 at 2015-09-20 10:42
yahさん、4日間も掛けて遊んできました。
ヒサゴ沼まで一気に歩く自信が無くなりましたので、こんな計画になりました。
涼しい秋だから、何とかなりましたが、花の季節の暑い日だったら、もっと時間が掛かるのでしょう。
 
yahさんのパワーが羨ましいです。
いずれの夜も、ガスが掛かり、星は見られなかったです。
それは、yahさんに、お任せしますね。


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