大雪山 お花見山行 Day1

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7月6日、銀泉台の駐車場で目覚める。今年初めての宿泊装備で挑む山は、通い慣れた、赤岳を経て白雲避難小屋までのルートだ。花の種類の多さと、変化に富んだ景観を楽しめるということで、人気の登山路でもある。ザックを担いだ瞬間、その重さに心が折れかかる…。果たして、無事に辿り着くのだろうかと、不安が襲いかかる…。今日は、励まし合うママもいない。自分の弱い心と闘うソロ山行なのだった。




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登山口
 
 

さて、ソロ山行というのは、僕にとって、哲学への誘いなのだ。疲れてくると、心の中がシンプルになる。そもそも、「行こうかな」「やめようかな」という単純な二者択一に支配されることから始まる。実際、何度も引き返したこともある。で、それで良かったのかというと、それはない。怪我でもなく、極端な体調不良でもなく、ただ、頑張る気持ちが失せただけの結果を、受け止められないでいた。そんなことの積み重ねが、僕を、少しだけ強くするのだろうか。頑張り抜いた時の喜びは、頑張ったものしか感じ得ないという、至極当然の結果を手に入れられるのだ。
 
なんてことを、ひたすら、グルグルと思い巡らせながら、重荷に耐えて歩くのだった。
 
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ハクサンチドリ
 
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第一雪渓
 
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ツマトリソウ
 
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ホソバイワベンケイ
   
 
最初に訪れる雪渓は、急斜面の長いトラバースだ。夏道は、殆ど雪の下の隠れている。このために、ママからストックを借りてきた。ストックを使って登山をするのは初めてだ。これが、なかなか有効だった。どちらかというと、ストック否定派だったけど、もう、それは胸に収めよう。
 
平日でも、先行する登山者がいたお陰で、雪渓にトレースはついている。しかし、滑り落ちたら、下まで止まらない。そんな場合ピッケルの方が安心だけど、その重さにも堪えられない体力になったことに、ガッカリする…。重荷でバランスを崩したら、転倒は間違いないので、慎重に足を運ぶ。
 
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雪渓の取り付き
 
 
雪渓の取り付で写真を撮った後、トラバースが終わるまで写真が無い。よっぽど緊張していたんだね。トラバースが終わり、ヒョイとひと登りで、ベンチも設けられた休憩場所がある。まだ序盤なので、休まないで素通りする人もいるけど、僕は、当然休む。天気も良く、風も弱い。気温は高いが、湿度は低いようだ。休憩を適度に摂れば、何とかなるだろう。
 
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ウスバスミレ
 
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ミツバオウレン
 
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ニペソツ山を望む
 
 
ここからは、第二雪渓、奥ノ平、コマクサ平と、名所になる目標が、比較的近い距離で現れる。距離感も分かっているので、気分的に楽な道のりだ。勿論、反対に、分かっているが故に、気分的に落ち込む場所もあるにはある…。
 
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第二雪渓
 
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奥ノ平
 
 
第二雪渓も奥ノ平も、雪で覆われていた。今年は雪が少なかったのだけど、6月の気温が低く、雪解けは遅れているようだ。この様なところは、遅い春を迎え、百花繚乱の季節も待っている。大雪山は、長い時間、至る処で、春と夏を感じることが出来る。
 
コマクサ平は、すっかりと雪は消えていた。しかし、まだ、その名前の由来のコマクサは、満開には程遠い。キバナシオガマも数株見掛けたが、年々少なくなっている気がする。ここは、いつも人の往来が多い。ここを目的に訪れる人も多いのだ。無粋なロープがなければ、楽園のようなものだ。もっとも、ロープが張られたのは、盗掘の被害で、コマクサ平の荒廃を目の当たりにした過去があるからだ。
 
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コマクサ
  
    
のんびりと歩いていると、前方に、巨大な雪渓が近付いてくる。それが、第三雪渓だ。さっき書いた、分かってるが故に、気分的に落ち込むという場所のひとつだ。
 
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第三雪渓
 
 
第三雪渓は、距離的にも斜度も、最も苦しい登りだと思う。夏道は、下から上まで、しっかりと雪で埋もれている。丁度、団体さんが、前を登ったばかりだったので、ステップが切られていて、余計な神経は使わずに済んだ。最初の急傾斜が厳しい。天に続く階段のようだ。足が上がらなくなってくると、ストックに頼ってしまうのか、腕や背中の筋肉まで痛くなってくる。全体の3分の1ほど登ると、若干斜度は緩くなる。振り返る余裕も出て来たりするが、それほど登っていないことを知り、ガッカリする。頑張り処でガッカリすることほど、心が折れることはない。ガッカリがガックシに変わる瞬間だ。僕の哲学が、最高潮に達する…。
 
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途中からコマクサ平方面を振り返る
 
 
何とか登り切ったとき、僕の足はヨレヨレだった。ザックを放り出し、仰向けになる。大休憩だ。ここで達成感がないのには理由がある。もう間もなく、最後の難関、第四雪渓が待ち構えているからだ。距離も斜度も、第三雪渓より楽なはずだけど、既に、心もズタズタになっているから、精神力も試されるという難関なのだ。逡巡していても、答えは導かれない…。歩き続けるしかないという選択以外にはないのだ…。
 
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イワウメ
 
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コメバツガザクラ
  
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第四雪渓
  
  
途中、何度か小休止を繰り返し、何とか、山頂への稜線上に出る。後は、レッドカーペットの一本道だ。いや、足下には、ミヤマキンバイ、タカネスミレのイエローカーペットだ。
 
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赤岳頂上へ
 
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タカネスミレ
 
 
待望の赤岳山頂、と言いたいところだけど、実際に目に入るのは、赤岳以外の大雪山の山々だったりする。その雄大さに目を奪われ、それに比べて控え目すぎる赤岳山頂は、ただの通過点に思えてしまう。
 
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山頂からの風景
 
 
赤岳の山頂では、ザックを下ろさずに、そのまま歩いた。もう、灌木帯もない。所謂、風衝地帯で、一見、何もない岩礫帯、もしくは砂礫帯にしか思えないが、ここにこそ、様々な小さな命が息づいている。同じようにしか見えない土壌だが、少しずつ栄養分でも違うのだろうか、花の種類は住み分けられている。それを覚えると、花探しは容易になる。しかし、赤岳から小泉岳の散歩道は、花が少ない。チョウノスケソウは数えるほどしか見付からず、イワウメもミネズオウも絨毯にはなっていない。目立つのは、ホソバウルップソウとエゾオヤマノエンドウの紫色ぐらいだ。
 
淡々と歩き、最後は這松帯の登りを終えると、小泉岳の稜線上に出る。そこも、一面の風衝地帯だ。この中に、大雪山屈指の花の数々が咲いているのだとは、思いにくい。僕は、花の撮影をしないで、歩き続けた。いちいちザックを下ろしたりするのも面倒だ。それに、明日は撮影の日としての日程を組んである。
 
稜線の一本道を歩いていると、地面から這い上がるように、白雲岳の黒い塊が、徐々に姿を現す。その全貌が顕わになる頃、さっきよりも、もっと雄大な大雪山の風景が拡がる。そして、緑岳への分岐を過ぎると、もう下るだけの道だ。白雲岳の分岐は、十字路になっているので、いつも人が憩っている。ザックだけが置かれているのは、白雲岳を往復する人たちのものだ。僕は、左に折れ、白雲の避難小屋に向かう。もう登らなくても良いと思うと、気分は上々、鼻歌でも歌いたい気分になる。
 
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小泉岳の稜線から白雲岳、遠くにはトムラウシ山
 
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トムラウシ山
 
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避難小屋を見下ろす
 
 
心配事が、ひとつだけあった…。それは、テン場の様子だった。全面雪が覆っているのか、解けていてもドロドロではないのか、良好な場所は既に埋まってしまっているか…。以前、この時季に、雪の上にテントを張ったことがあるが、寒くて大変な思いをした経験がある。
 
長い雪渓越しに、徐々に避難小屋が見えてくる。テン場はどうかというと、土が露出している部分があった。テントは2張りほど張ってあり、その他1張りは雪の上にあった。雪との境目は光っており、ドロドロであることを窺わせている。ちょっと期待できそうだなと思うと同時に、足早になった。早い者勝ちだからだ。
 
間近になった頃、高根ヶ原の全容が現れ、遙かなるトムラウシへの縦走路も見えてくる。歩いても歩いても、風景は変わらず、少しも近付かないトムラウシ…。遙かなる山と呼ばれる所以でもあった。
 
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ここから、トムラウシを経て、十勝連峰まで続く縦走路
 
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縦走路が見えます
 
 
テントは、無事に乾いた土の上に張ることが出来た。快適な夜は、約束されたのだ。小屋には、ツアー客などが宿泊しているようだ。夕方にかけて、続々と個人山行パーティーも到着する。殆どは小屋に吸い込まれ、テント泊は、数張り増えたのみだった。快適な場所は埋まったので、小屋に変更したパーティーもいたのかも知れない…。
 
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エゾオヤマノエンドウ
 
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エゾハハコヨモギ(開花前)
 
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ミヤマアズマギク
 
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テン場
 
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白雲避難小屋
 
 
テントを張り終えた後、水を補給し、小屋周りの庭の花を撮影したりした。まだ日が高いので、散歩に出掛ける人もいるけど、僕には、そんな元気は残っていない。珈琲を飲みながら、読書をしていたら、ウトウトしてしまったようだ。日が暮れる前、夕食を済ませると、再び、眠気が襲ってきて、そのまま眠ってしまった。こうして、1日目を、終えた…。


Nikon Df
AI AF Zoom-Nikkor 24-85mm f/2.8-4D IF


by meo_7 | 2016-07-10 20:58 | 登山(山岳徘徊倶楽部) | Comments(4)
Commented by yah-_-yah at 2016-07-11 13:01
三浦さん、こんにちは。

テント担いで白雲に行ってきたのですね。お疲れ様でした。
僕もテン泊装備を担ぐのは年に1~2回程度しかなく、
あの重いザックを担いで歩くのは苦行です。
花を撮るのにしゃがんだり立ったりが億劫で、花の写真も少な目になってしまいます。

ところで白雲に行くのに、銀泉台と高原温泉からではどちらからが好きですか?
僕は特にどちらが好きということはないんですけど、恐らく高原温泉から登ることの方が断然多いです。
自己分析すると、下山後にすぐ温泉に入れるからと思います(笑)
Commented by meo_7 at 2016-07-11 13:27
yahさん、こんにちは。
ソロのテント山行は、荷物を分散できず、全部背負わなければならないので、苦行です。
 
さて、ルートですが、花の撮影なら花の種類の多さから、銀泉台からが効率が良いと思って利用します。
ただ、第三雪渓、第四雪渓と、頑張り処がきついので、精神的にやられます。
高原温泉からですと、第一花畑の雪が解けた頃に利用することが多いです。
緑岳への登りはきついですが、高原沼やトムラウシを眺めながら休憩するのも好きです。
また、避難小屋への距離も短いので、いいですね。
勿論、下山後の温泉も魅力ですね。
 
また、行きたくなりました。
 
Commented by てばまる at 2016-07-12 09:58 x
お疲れ様でした。
初日はただただ担ぎ上げる作業だったのですね。空身でも銀泉台からはキツイだろうと思ってましたがテントとなるとかなり・・・でしょうね。
でも、登れば雄大な景色と花が待ってると思うと頑張れるものです。

テン場写真が出る直前のレポ読んでて私なら敢えて雪の上に張るな~と思っていたら張ってる人がいましたね(^^;) ドロドロの上に張るよりは雪の上の方が汚れなくて済みますからね~ 

北岳の稜線にテント上げようかと目論んでますが、至仏山2つ登るようなところですから、ちょっと悩み中です。 前回、御池にテントでそこからピストンでしたが、日の出狙うと寝不足でキツイですので出来たら稜線に張りたいですが・・・
Commented by meo_7 at 2016-07-12 11:29
てばまるさん、こんにちは。
年々辛くなる今日この頃です。
運良くテン場では土の上で張れました。
もし、ドロドロか雪の上しかないのだったら、初日は小屋泊まりだな、と思いながら登っていました。
2日目には何処か空くと思うので…。
 
北岳は2回も計画を練りましたが、お流ればかりです。
てばまるさんなら、肩の上のテン場までは歩けるのではないですか?
花の種類から考えると、7月中がベストですかね?
今の僕だったら、御池に1泊、北岳を超えて北岳山荘にテントを張り、翌日稜線散歩と八本歯辺りの花散策で2泊、翌日下山ですね。
 
小屋泊まりなら楽なんでしょうけど、ママが混み合う山小屋が苦手なんです。それに、南アルプスの山小屋は何かと…。
 


時々、想うこと…


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